未来を切り開く保険代理店(経営) 企業代理店の将来像
ブルーウェル インシュアランス ブローカーズ 代表取締役 大久保 隆史
逆境、実は飛躍への絶好のチャンス
企業代理店の将来像、それはずばり企業グループ内で専門的機能をしっかりと果たしていくプロフェッショナル集団です。「保険会社の代理店選別強化と事務負担増加の要請」、「企業グループ内での不採算部門整理のプレッシャー」、「職域保険加入率の減少」と、企業代理店を取り巻く環境は厳しさを増している今日この頃です。でもちょっと見方を変えて見ると、これら逆境とは裏腹に、能力のある企業代理店が大きく飛躍する時代がまさに到来していると言えるのです。まず、「保険会社による代理店選別強化と事務負担増加の要請」についてですが、保険会社がしっかりと保険募集事務を任せられ、かつ損害率の管理までもきちんとやってくれる本格的な代理店の登場を望んでいることは明らかです。機能なき代理店の整理は進める一方で、優れた代理店にはより高い手数料率で報いようというのが新代理店手数料の趣旨だと思います。規模のメリットがあり、人材確保やシステム投資への余力を持つ企業代理店こそが、本格的代理店に到達できる最も近い存在でしょう。次に「企業グループ内での不採算部門整理のプレッシャー」ですが、採算という観点とは別に、企業の側に企業代理店の持つ専門知識に対する大きなニーズが出てきています。企業経営へ厳しい監視の眼を向ける外国人投資家の存在がますます大きくなっている現在、火災や自然災害、賠償責任リスクなど、不測の事態から会社資産を守るリスクマネジメントの実践や、その具体的手段としての損害保険の付保は経営上の重要事項となっていますが、損害保険付保政策の戦略的な立案は損害保険の専門的な知識なくしては不可能です。企業グループ内唯一の保険プロフェッショナルである企業代理店の能力が高ければ高いほど、不採算部門の整理どころか、むしろ一層の役割発揮への期待が強まっていくはずです。最後に「職域保険加入率の減少」です。ダイレクトメールやテレマーケティング、ネット通販など販売チャンネルの多様化により、職域での保険販売は今後とも加入率の減少に歯止めが掛かりそうにありません。しかし、これを危機として認識するのではなく、「団体割引だけを武器とした職域での保険販売代理」という考え方から、「団体保険を活用した企業の戦略的福利厚生政策構築への保険プロフェッショナルとしての参画と機能発揮」という考え方に転換していく契機になると捉えることも出来るのではないでしょうか。
上記のように、企業代理店は逆境をチャンスに変えていく大きな可能性を秘めていますが、そのためのキーワードはグループ内でしっかりと機能を発揮することにより「尊敬される存在」になることそして「保険会社からの自立」することです。
グループ内で尊敬される存在に
欧米企業では法務部や審査部などと並立して保険マネージャーやリスクマネージャーという職制が確立されており、特に米国ではその加盟団体であるRIMSが毎年1万人以上の参加者を集めて大規模な年次総会を開催しているのは有名な話です。欧米企業の保険マネージャー・リスクマネージャーは企業グループ全体の保険手配に関する責任を負っています。保険プロフェッショナルとしての専門知識をフルに発揮して企業グループにとって最適な保険プログラムの追求を行うと共に、グループ内の各部署への保険やリスクに関する指導や相談を一手に引き受け、グループ内のプロとしての尊敬を集めているのです。他方、日本の企業では損害保険の付保は総務部や財務部、経理部などが付随業務として担当している場合が殆どで、本社内で損害保険分野の専門知識が継続的に蓄積されていく余地はありません。また、効率経営追求の観点から、間接部門としての本社機構はむしろ縮小されていく傾向にあり、今後、保険担当部門が本社内に新設される可能性は少ないでしょう。連結経営が主流になっている現在、企業代理店こそがグループ内唯一の保険プロフェッショナル集団として連結企業グループ全体の保険マネージャー・リスクマネージャーとして役割を果たしていく存在であることを声高にアピールしていくべき時代の到来です。そのためにも、企業代理店は単なる保険代理店、即ち保険会社の商品をそのまま媒介する存在ではなく、企業グループ各部署からのより幅広いリスクや保険の相談に対し、その業態や立場を良く理解した上で、専門的なアドバイスや提案が行えるリスクコンサルティング的機能を果たしていくことが不可欠です。これにより企業代理店は、企業グループ内の各部署から信頼して相談される存在、プロとして「尊敬される存在」になっていくことが出来るでしょう。
「保険会社からの自立」とは
保険商品の売り手である保険会社と、買い手である企業との利害が完全に一致することはあり得ません。企業が企業代理店に求めるのは、保険会社からの提案が本当に企業にとってベストなのかについてのプロとしての検証、更にはどの保険会社のどの保険商品がコスト、保障内容において優れているのかの企業代理店としての積極的提案など、専門的機能の発揮だと思います。そのためのキーワードが「保険会社からの自立」です。自立とは敵対ではなく、相互に尊敬し合い、信頼し合いつつも、プロフェッショナルとして正々堂々と、対等の立場でビジネスを交渉していくということです。対等な立場でビジネスを交渉するためには、保険会社の提供する商品内容や値段だけにどれだけ精通してもそれだけでは不十分です。保険会社としての採算性、更には保険会社としてのリスク保有や再保険手配まで理解を深める必要があります。このように相手方の財布の中身まで相当理解した上で、主張すべきは主張し、譲るべきは譲って保険会社と共存共栄の関係を築いていくこと、これこそが「保険会社からの自立」だと言えるのではないでしょうか。
このように保険会社の財布の中身を理解し、共存共栄の関係を築いていく上で画期的な役割を果たすのが企業代理店によるレンタキャプティブの導入です。
レンタキャプティブという選択肢
ここではレンタキャプティブの説明は割愛しますが、レンタキャプティブの導入により、従来はブラックボックスだった保険会社の採算、言い換えれば企業側から見た保険料の原価が相当程度明らかになります。これにより企業代理店は保険会社との交渉をより論理的に進めることが出来る一方、保険会社の側でも徒に根拠なき保険料値引き競争に巻き込まれることを回避できるというメリットが出てきます。更に、レンタキャプティブは保険会社とリスクと収益を分担する仕組みですから、企業代理店が企業グループの損害防止努力の主導することにより、その果実を企業代理店と保険会社双方が享受できます。まさに企業代理店と保険会社をもたれ合いの関係から自立した大人の関係、共存共栄の関係へと転換させていく大きな手助けとなるのです。レンタキャプティブ導入により企業代理店にもたらされる収益の使い道は様々です。企業代理店に与えられたミッションの中で収益追求、即ちプロフィットセンターの役割への期待が大きい場合、レンタキャプティブ収益は代理店手数料以外の新たな収入源としてそのまま業績向上に貢献します。企業代理店がレンタキャプティブ収益を原資とし、優秀な人材の確保やシステム導入等、機能強化への再投資に向けることという考え方もあるでしょう。
レンタキャプティブ自体は単なるひとつの道具に過ぎませんが、そのような道具をうまく利用しながら、保険プロフェッショナルとして保険会社から自立し、グループ内で尊敬される存在へと脱皮していこうという経営姿勢、これこそが未来を拓く企業代理店のあるべき姿ではないでしょうか。
以上